【 2011年5月:カンヌ(フランス)にて 】 |
─────────そして4ヶ月後の9月11日、奉納上映は無事行われた。
(イベント公式HPはコチラ→『3.11 A Sense of Home Films』)
今回そのイベントに併せる形で急遽来日した監督がいる。
ビクトル・エリセ監督だ。
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【 Víctor Erice 】
エリセ監督と云えばやはり「El Espiritu de la colmena(1973)邦題:ミツバチの
ささやき」だろう(この映画についてはいつかgkz氏による絵付きのレビューが
観られるだろう…などと勝手に期待して、此処では余り触れないでおこうと思う)。
10年に1作品しか発表しない寡作な監督が僅か4ヶ月で撮った作品とは…?
今回発表されたショート・フィルムのタイトルは" Ana, three minnutes "。
ピンと来た方も居られるかと思うが、この超短編には何と「ミツバチのささやき」
で主役のアナ役に抜擢されたアナ・トレント(Ana Torrent=当時5歳)が登場する。
今回の新作の内容は…大人になり美しい女優として成長した彼女が
正面からカメラに向き合い、フィルムを観る全ての者に対して直接
メッセージを送る・・・というエリセ監督としては「超・超」異色作。
今までの作品で見られ、評価されてきた絵画的・幻想的な手法は
直截的な表現を好まないエリセ監督の真骨頂にも拘らず、今回は
どうしてこの様にダイレクトに真意を伝える作風になったのだろう?
その謎の答えは9月15日放送のクローズアップ現代(NHK総合)で
放送された「 3.11 世界の映画監督からのメッセージ」の中で、
監督自身の言葉により明かされた。この放送プログラムは再放送の
予定が無いらしいので一部を抜粋して文字に起こしておこうと思う。
放送プログラムより 抜粋 |
しかし、この短編は直接的な表現だけで終わっている訳ではない。
アナがPCを立ち上げた際にモニターに一瞬映る
6 AGOSTO 2011(8月6日)という日付、
マッチで蝋燭に灯される火、その脇に置かれたカード、
終始片隅で首を振り続ける扇風機の音、そしてライティング…
彼ならではの繊細な美意識や幻影的な画面と、様々な示唆を示す
細々とした気配り。そしてアナの口から発せられる力強い言葉。
この相対する二者を見事に両立させた素晴しい短編だ。
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原子力による発電についてはこの日本のみならず発電に原子力を
利用する国、またその近隣諸国に於いて様々な論議を呼んでいるが、
立場のせいかその是非の意見表明を避ける人も少なからず居る。
今回エリセ監督が原子力発電にNOを突きつけたフィルムはアナを登場
させる事で自分の代表作とも云える映画を下敷き作られていて、それ故
負う処も多きい筈で、そう云う意味でも監督の心意気が伝わってくる。
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尚、エリセ監督は11日の奉納上映後の現在も来日中で、
17、18、19日にはなら国際映画祭2011にも来場予定との事。
行ける方は是非足を運んで頂きたいと思う。
又このプロジェクトに出品された作品群は被災地を巡回するというが
東京でも上映されるのだろうか。。是非スクリーンで観たい…