10/02/2011

日曜日の憂鬱~映画番組に解説者がいた頃~



つい先日20代の知人と話していたら、こう言われた。
「この前『サザエさん症候群』に罹っちゃって。サザエさんの終わりの
 曲聴いた瞬間に軽くウツ入って、自殺したくなっちゃいましたよ(テヘ」




「サザエさん症候群」とは所謂「ブルーマンデー症候群」の事らしい。
試しにgoogleで「日曜日 憂鬱」で引くと78万件超。ある統計によると
フランス人の約半数近くが「日曜の夜は憂鬱で眠れない」と答えたと云う。

こちらの世代としては「ブルーマンデー」と言われて真っ先に思い出すのは
ブームタウン・ラッツの" I Don't Like Mondays(邦題:哀愁のマンディ)"
だが…今時はサザエさんやし笑点のテーマが取って代わっているようだ。


貴方にとっての「ブルーマンデー」のトリガーは何だろうか?

● ● ● ● ● ● ● ● ●

さて、話は変わるがテレビ映画劇場の老舗番組「日曜洋画劇場」が、放送開始
から45周年を迎えるという。そこで今月の4週連続で「ダイ・ハード」を
一挙に放送するらしいが、今回伝えたい事は映画の内容ではなく解説についてだ。

1、2の解説を淀川長治氏が生前解説したフィルムを使うと言うのである。
(「ダイ・ハード」10月9日、「ダイ・ハード2」10月16日放送予定
 公式HPはこちら→テレビ朝日 日曜洋画劇場

果たしてこの趣向が好企画なのか悪趣味なのか、丁度良い機会なのに
往年の名画を差し置いて何故ダイ・ハードなのか…はこの際置いといて、
淀川長治氏と彼の解説に対する姿勢について少し書いておきたいと思う。

- - - - - - - - - - - - - - -

吹き替えの是非については此処では取り上げないが、放映時間に合わせて折角
計算されたシーンを所々カットし、関係無いCMで否応無く細切れにされる運命
にある事を考えると、映画をテレビで放送するという事はハッキリ言って無謀だ。

しかし、淀川長治氏は『正直申してジョン・フォードの「駅馬車」をテレビで
見るのはしんどい、つらい。だが、見ないよりはいい。それもテレビでやると
いつもは劇場に行けない人までみんな見られる
』と言い、解説を続けた。

確かに映画館で一人で行ける年齢になり街のあちこちにLDやビデオのレンタル
ショップが出来始めると、テレビ(特に民放ゴールデン・タイム)で映画を
見る機会は殆ど無くなってしまった。しかし小学生の頃に居間のテレビで見た
様々な映画の記憶は、何年も経った今でも鮮烈な印象と共に心に残っている。

また当時は往年の名画やアクション物のヒット作の他にもは勿論、「穴」
「死刑台のエレベーター」「灰とダイヤモンド」「博士の異常な愛情」
「シベールの日曜日」「ジョニーは戦場へ行った」「イージー・ライダー」
「ベニスに死す」「地獄に堕ちた勇者ども」等の今地上波ゴールデンでは
有り得ない様な作品や文芸作品もキチンと評価し取り上げられていた。




そして『どんな詰らない映画でも絶対いい所がある。それを拾って皆に
説明するのが私の使命
』という姿勢を最後まで貫いた淀川氏。氏は例え
褒めるべき点が全く無い映画でも、俳優、カメラ、音楽等少しでも優れ
ている箇所を救い上げ、それをあの独特の語り口で視聴者に提示し続けた。

アーノルド・シュワルツネッガーを初めて「シュワちゃん」と呼び、件のシュワ
ちゃんがゲスト出演した折にはカメラの前で無邪気にはしゃいで見せた淀川氏。
今回のニュースを期に、時に身を乗り出し、声真似まで絡めつつ、映画が持つ
魔法の様な魅力を存分にお茶の間に届けてくれた氏の偉業を改めて思い起こした。

● ● ● ● ● ● ● ● ●

最後に。冒頭の「サザエさん症候群=ブルーマンデー症候群」についてだが、
個人的には何と言っても下記の組み合わせが日曜日の終わりを告げる象徴だ。



この「サヨナラ、サヨナラ、、、、サヨナラ」と、間髪入れずに流れる
クラシック調の" SO IN LOVE "の鉄壁のコンボ。今改めて見返しても
子供心にも言い知れぬ物淋しさや感傷に駆られた記憶が蘇ってくる。

報道によると9日と16日には本編の後に「サヨナラ、サヨナラ…サヨナラ」
の名調子も挿入するかも?という事らしいが、もしもダイ・ハードでなく
「ナバロンの要塞」辺りが放映され、その上この曲まで流れたら…

…そう妄想するだけで、今から物憂い気分に浸ってしまいそうだ。