3/01/2009

蛍のひかり



選曲:Just a Gigolo

THELONIOUS MONK TRIO(1954)

独語詩:Julius Brammer作曲:Leonello Casucci(1929)

レコードNO:PRESTIGE 7027



この時期学び舎から聞こえる「蛍の光」。
この歌が1958年4月1日午前0時、
日本中の「とある場所」で流れたと…言われています。

~私の家はその「とある場所」にあり、6畳一間に家族4人(私、母、祖父、母の弟)暮らしておりました。
窓を開けるとすぐ隣の家があり、幼い私でも窓越しから隣の家に足を伸ばして移れる程の距離でした。
隣にはとても「綺麗なお姉さん」が1人で住んでおり、部屋は鏡台しか無く狭い部屋でしたが、
とても甘い香りがする部屋で、時々見たことも無いお菓子の箱からお菓子を私にくれ、
喜んでいる私にやさしく微笑でおりましたが、私にはお姉さんのその笑顔に少し寂しく感じられました。

ある晩、私はなかなか寝付けず布団の中で起きていると、街中に「蛍の光」が流れ始め
普段は一晩中ネオンが消えない街でしたが曲が終わると街中のネオンが一斉に消えていき、
どこからともなく女性の啜り泣く声が街中から聞こえ、私には全く意味が判らない不思議な夜でした。
不思議な夜が明け、朝私が窓を開けると「お姉さん」の部屋には何も無くガランとしており、
「お姉さん、故郷に帰ったんだって…」背後から母がそう言い…

微かに残る甘い香りがさらに私を寂しくさせた。


たかがジゴロさ、
僕が行く所どこでもみんなが僕の役割を知っているのさ。
ダンスの相手をして稼ぎ、
みんなにロマンスを売り、
毎晩だれかの心を傷つけている野郎だとね。
だからいつか若さも衰える日が来るんだろうけど、
そしたらみんな僕のことをどう言うだろう?
その日が来たら多分、まあ、みんなこう言うね
「たかがジゴロさ」
だって僕がいなくても人生は続くんだから~


【第118号売春防止法:刑事処分については1年間の猶予期間が設けられ1958年4月1日から適用】

…そう、私の一家は「赤線」と呼ばれる街で暮らしていました。

ジゴロ、お姉さんへの愛の極致は、
『彼ら、彼女らがどのように苦しんでいるのか?』と問いかけることが出来ることではないでしょうか?
あくまでも『私達と同じ1人の人間として受け入れる事』ではないでしょうか?
しかし、新しい時代・社会は彼らを時代と言う渦に巻き込み、
その中で翻弄するその者達を「なっかた事、なっかた物」とすることが多く見受けられます。

そんな彼ら、彼女らを少しの間、
記憶の隅にそっとしっまって置きたい。