1/31/2011

Interplay ロング・グッドバイ-浅川マキの世界-


「ロング・グッドバイ-浅川マキの世界-」&「浅川マキCD 紙ジャケ再発」リリース記念イベント
~ 2011年1月27日のレポートのようなもの ~


『 ロング・グッドバイ―浅川マキの世界 』 2011年 白夜書房夜の8時過ぎ───新宿タワーレコード、七階フロアーでは小さな
ステージを取り囲むようにして既に多くの人が立ち並んでいた。
丁度、自分が着いた頃にはゲストの山木幸三郎、亀淵友香、萩原信義、
各氏によるトークが淡々とした雰囲気で進行していた最中だった。

それぞれ浅川マキとは深い関わりを持たれた方々だ。トークでは
最初の出会いからレコーディングやツアーといった仕事を通しての
関係について、それから浅川マキの魅力について、また、ちょっと
した彼女の逸話やエピソードなどが語られていたと思う。

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時折、亀淵さんがマキさんの私生活の話題について触れようとする度に
「大丈夫だよね?テラさん」と、傍らに控えている関係者の方に向って
伺うように聞いていたのを覚えている。テラさん───、もしかしたら
マキさんの初代プロデューサーだった寺本幸司さんの事だろうか?

そういえば浅川マキに対する正当な再評価の為に二十代、三十代の
若い世代に浅川マキを聴いてもらいたい───と、そのような寺本幸司
さんの現在のスタンスをネット上のCDレビューで読んだことがある。

寺本さんは日本で初めて出来たレコードの原盤制作会社「アビオン」
を創った人だ。以前に出版されたマキさんの本『幻の男たち』には
そう書いてある。アビオン制作第一号の歌手が浅川マキ本人だったという。
『幻の男たち』から少し引用してみる───

『 Long Good-bye 』 2枚組ベスト 2010年 TOCT-26998
” たった一枚のシングル盤のレコードを吹き込んだときから、
十何年のあいだ、それはつい先頃まで、わたしが歌手で
寺本幸司さんはプロデューサーであった。  ~中略~

ながいあいだが過ぎると、彼は咳払いする。それは歌手が
唄う前に声の調子を整えるのに似ていて、遠慮がちで小さい。
そんな彼の癖は、わたしが舞台に出て行って、これから唄おうと
するときに、鎮まり返っている客席の隅から聞こえてきた。

どんなに大きな会場のときでも不思議とこちらに伝わるのである。
マイクロフォンを片手に持ち俯いたままで、そんな彼の癖を、
わたしは一度も聞き逃したことはなかったと思う。 ”

~ ”プロデューサー” 浅川マキ 著 『 幻の男たち 』 1985年 講談社より ~


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プロデューサーと歌手。そこには余人が入り込めない、とても強い絆や
パートナーシップがあるのだろう・・・思わずそんな事を考えてしまう。
話を元に戻そう。トークの次に亀淵、萩原両氏による演奏が始まった。

「ロング・グッドバイ-浅川マキの世界-」&「浅川マキCD 紙ジャケ再発」
リリース記念イベント・ミニライブ 2011年1月27日@新宿タワーレコード


亀淵友香(Vo)萩原信義(G) セットリスト

1. 「赤い橋」 作詞 北山修/ 作曲 山木幸三郎
2. 「あなたなしで」 作詩 浅川マキ/ 作曲 Williams
(原曲:オーティス・クレイ”Trying To Live My Life Without You”)
3. 「私のブギウギ」 作詞 成田ヒロシ/ 作曲 南正人

亀淵さんの声が深いブレスから解き放たれたように力強く響き渡ると、
萩原さんはそれを待っていたようにゆっくりとしなやかなストロークで
終止のコードを鳴らしていく。音の粒が際立っていてとても鮮やかだ。

つかの間のライブ空間───
観覧してる人たちから大きな拍手が沸き起こり、イベントは終了した。
スペースから人々が立ち去り、ややあってから再びショップの様相を
取り戻す店内。やがてマキさんの歌声がおもむろに店内のスピーカーから
聞こえて来る。それは『夜が明けたら』のとてもクールな歌声だった。

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『 浅川マキの世界 』 1st album 1970年作品 / 2011年紙ジャケ再発 TOCT-27041僕は陳列されたCDを眺めながら、イベント・スペースの疎らになった
人影の方にふと目を遣った。と其処には関係者らしき人に囲まれ談笑
している萩原さんが居た。挨拶を受ける山木幸三郎さんの姿もあった。

それから僕は来たときと同じようにエレベーター・ホールへと向った。
満員となった一台をやり過ごし、次に来た空のエレベーターに乗る。
そこへ、山木幸三郎さん、スタッフらしき女性、それと背の高い紳士が
乗り込んで来た。三人はとても落ち着いた雰囲気で和やかに話をしている。

エレベーターから降りる間際、何故なのだろう?突然僕は、背の高い紳士の
顔を覗き見たくなった。そんな気配を察したのだろうか、不意にこちら側に
顔を向ける背の高い紳士。それはとても穏やかな表情だった。 
彼が咳払いをしたかどうかは覚えてない──────。



by gkz


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