6/23/2011

シェルブールの・・・ (リクエストノートより Ⅵ)



先日、初老の男性から
「シェルブールの雨傘を」というリクエストを頂いた。


シェルブールの雨傘 Les Parapluies de Cherbourg
監督:Jacques Demy 音楽:Michel Legrand




"シェルブール雨傘店"の娘ジュヌヴィエーヴと自動車整備工のギィとの恋。
やがてジュヌヴィエーヴは身ごもり、ギィはアルジェリア戦争に召集され
引き裂かれてゆく…という内容のミュージカル映画の主題歌だ。

オープニング・シーン動画 @Youtube

またこの映画は少しだけ政治的なメッセージを含んだ映画でもある。



アルジェリア戦争

54年に勃発したフランス支配からの独立戦争の事。当時多くの若者達が
シェルブール港から戦地に赴いた(後の63年、アルジェリアは独立を果たす)。

この戦争に対しフランス政府は" 忘却政策 "を行い、アルジェリア戦争に
関する一切の報道を規制し過去の汚点として忘れ去ろうとした。しかし
1990年代に入ると記憶の義務運動が起こり、戦争当時の拷問やテロなど
非人道的な問題が取り上げられてマスメディアで報道されるようになる。

これに対し仏政府は2005年2月に「フランスの植民地支配を肯定する法律」を成立させ
アルジェリアの支配を正当化しようとしたが、猛反発を招き 一年後に廃止された。



そういった意味もあるにせよ、まあ普通に
梅雨時に因んだリクエストなのだろうと思っていた。
しかし、件の男性は意外な言葉を継いだ。

「アレヴァ社の本社がシェルブールにあるから」

それは流石に知らなかった… その夜、早速調べてみた。


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日本とシェルブールの意外な関係

日本は核燃料の再処理をフランスに頼っている。日本の原発で使われた
核廃棄物は日本の港からフランスのシェルブール港に輸送されている。
それらは仏アレヴァ社の再処理施設にて高レベル放射性廃棄物(ガラス
固化体)へと姿を変え、今度は逆にシェルブール港から輸送船に積み
込まれて日本へ運ばれ続けている。場所は青森県の六ヶ所村。




何と云う事だ。「シェルブールの核燃料」とは…
もう少し調べてみたところ、更にこんな事も判った。


・3月11日の震災以降にも係らずシェルブール港から日本に向けて
 MOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物)が4月上旬に輸送されよう
 としていたが、自然保護団体の告発により問題視されて急遽延期された。

・日本の電力各社は、仏アレヴァ社に原発のプルサーマル用にMOX燃料の
 加工を依頼しており、これまでに4回フランスから日本へ海上輸送されている。
 このうち1999年の第1回目の輸送で運ばれたMOX燃料が
 福島第1原発3号機で使用されていた。

・四国電力は来月10日に伊方原発を再稼動する為に、
 6月24日にMOX燃料を含む核燃料の装填作業を行う。



今まではカトリーヌ・ドヌーヴの初々しい姿とルグランの
音楽しかイメージしてこなかったこの曲だったのだが…

これからは、そうも行かなくなってしまった。