9/08/2011

ライブ一家言!


最後の後押し

ちょっと前、テレビで世界陸上の中継を偶然やっていた。
運動は億劫だが見るのは好きな性質なので、そのまま観ていた。

世界各地から集った精鋭達の鍛え抜かれた肉体、
そして頂点を目指し繰り広げられる真剣勝負。

たとえ個人種目であっても、決勝ともなると選手達の間では
凡人には及びもつかない様な細かな駆け引きが行われている
に違いなく、解説を縁にそれを想像するのがまた楽しい。

厳つい体付きをした猛者が、新人に追い詰められた前優勝者が、
ライバルの心を折り一発大逆転の大記録を狙う、緊張の一瞬。

その直前、選手達の眼差しは一様に競技場に詰め掛けている
観客席に注がれる。そして観客に向かって手拍子を求めるのだ。

パチ… パチ… パチ、パチ、パチパチパチパチパチパチパチ…

そうして挑戦者達は観客の「最後の一押し」導かれるように、更に
己を奮い立たせ、最大限のパフォーマンスに挑んでゆく ───────



その様を眺めていて、以前友人達と試した"ある事"を思い出した。

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或る仮説

ある日友人達と話をしていてひょんな事から≪曲と曲の合間に
何時もに増して熱心に反応したら、その後の演奏者のパフォー
マンスは必ず上がるか否か?≫
という話になった。

当時、その友人達と良く聴きに行っていたJAZZのライブがあった。

その演奏者Aのライブは定期的に行われていて、聴きに来る客数も
顔ぶれもいつの間にか自然と固定した"まったりライブ"だ。

落ち着いた演奏ぶり、曲目、そして期待通りのAの演奏に答え
つつもちょっぴり控えめな拍手。そういった、言わば
"安定しきったAのパフォーマンス"に変化は有るのか、否か。

電気羊は「検証するまでも無く、勿論有る」と自信を持って答えた。
と言うか、これに関しては電気羊なりの確信めいた持論があるからだ。

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give and take?

誰かのライブを聴きに行く、という事。
それは興味や好奇心、場合に拠っては付き合いで仕方なく…
という場合もあるかもしれないが、大方はその演者に対して
何がしかの"期待"を寄せた結果としての行為だ。

幾許かの金銭を払い、自分の予定を空け、その場に行く。
その代償として求める物は「選り良いパフォーマンス」だ
(それが譬え偶然通り掛かった無料の路上ライブであろうと
足を止めて聴く事自体で give and take は成立するだろう)。

普通ならばそれでライブを楽しめば済む話なのだが、
ココはもう一歩突っ込んで考えて欲しい。もしも貴方が
「選り良いパフォーマンス」を上回る「渾身のパフォー
マンス」を何としても演者から引き出したい!と思ったら、
どうすれば良いか────────────

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give and give、そして悪意無き教唆

その答えはめちゃくちゃ単純だ。
人目を気にせずダイレクトに演者に対し「アンタは凄い!
素晴らしい!」といった熱意や満足を伝え、時にはビリーズ
ブートキャンプばり(古)に「いや、アンタにはもっと出来る
筈だ!もっと魅せてくれ!」と煽り、演者を乗せまくれば良い。
言葉は悪いが"教唆"────つまり、そそのかすのだ。

更に言えば、偶然近くに居合わせた観客にもその"熱"を
伝播させる事が出来れば、後は期待通りのひと時を得られる
筈だ。勢い余ってライブの進行を無視した行為や一人目立って
自己満足に陥らない限り、それは十分可能だ。

只楽しませて貰おう、というだけで無く 更に演者に熱意が
伝わる様に行動に移す。それを含めた愉しみが其処にはある。

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(ところで、ライブの場で共通して見かける風景がある。
オールスタンディングの場合も含め、ライブ会場に於いて
自ら会場の後方に陣取り、訳知り顔に腕を組んで眺める輩だ。
顰め面や興味無さ気な表情を顔に貼り付けている彼等を見ると
よく不思議に思う。演者に何も期待していないにも係わらず
会場に居るのだろうか?単に「オレ オマエラと違うし」と
いった中二病患者なのだろうか?もし仮にその中の一部が
関係者や身内であればそういった居住いがライブの妨げに
なっている事に何故気付かないのだろうか)

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ジャンルは問わない

───────つい話が反れてしまった…話を戻そう。
演者を最高のパフォーマンスへと唆す手段は何でも良い。

行儀良くお固いイメージが強いクラシック会場でも、その
演奏が本当に素晴らしいと思えばその場で立ち上がって拍手
をしても良いし、賞賛の掛け声も全く問題とされない。

ホロヴィッツが最後に来日した折の演奏会では、その神業にも
等しい演奏が終わるや否や、初老の紳士までもが感極まっ
た様子でステージ下に殺到し、賛意を身体一杯に表していた。



クラシックでさえこうなのだから、少々のおイタが許される
様な熱いライブなら何か小道具を仕込んで持って行ってもOK。
賛否両論あるかもしれないが、個人的にはモッシュやダイブ、
クラウドサーフも有りだ(怪我その他諸々は自己責任で!)。

もし貴方が極度の恥ずかしがり屋さんなら、また運悪く会場の
最後方の席だったとしても、演者を励ます力強い拍手を惜しみ
無く注ぐだけでも良い。またそこがオールスタンディングの
ライブなら、音響が音場がと御託を並べず、一歩前に踏み出そう。
─────── その一歩が、道となる。(←!?


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仮説の検証

…という事で、次のAのライブで早速実行した。

演奏が終わった。
パチパチパチパチパチパチパチ(何時もの皆の拍手)
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!(我々の拍手)

その次の曲も、その次の曲にも。
狙い通り、付近の客にも力強い拍手は伝播した。

そして。
その後のAの演奏も次第に熱を帯びていったように思えた。
少なくとも電気羊には、そう感じる事が出来た。


最後に

会場に来て、つまらなさそうに一番後ろで腕組みをする?
受身で楽しませて貰うだけで、満足する?

それよりも 一歩踏み出して、愉しもう。


…それが電気羊の独り善がりな"ライブ一家言"である。

(更新が遅れたにも係わらず相変わらずの独断レビューではありますが
 …最後まで御静聴有難う御座いました m(_ _;)m  )