12/01/2011

" 由紀さおりさん、全米ブレイク " について
ちょっとだけ調べてみた


11月5日付けのニュースより

由紀さおり&ピンク・マルティーニによるコラボ・アルバム『1969』が
世界20ヵ国以上でCD発売・デジタル配信され、各国で大きな反響を呼んでいる。

[1969]

『1969』は、由紀さおりが「夜明けのスキャット」でデビューした1969年という年に注目し、
1969年当時の世界のヒット曲を集めたカバー作品で、1曲以外は全て日本語詞で歌われている。
11月1日にiTunesでの配信がスタートした米国では、11/2付ジャズ・チャートで1位を獲得し
ており、ピンク・マルティーニにとっても初となる1位が日本の歌謡曲のカバーという歴史的快
挙となった。US以外の各国でもカナダiTunesチャート・ワールドミュージックでも1位を獲得
しており、様々なカテゴリーでランキング上位に君臨、現在もトップ10にチャートインしたまま
話題が大きく広がっているところだ。CDも、10月10日に発売されたギリシャではIFPIアルバム
チャート6位獲得(2011/43週)、シンガポール
HMVインターナショナルチャート18位
(10/31付)という成績を収めている。スタッフも、『1969』が素晴らしい作品であることは確
信していたものの発売直後から世界各国チャートを賑わすことまでは想定外だったという。11月
7日には『1969』の米国CD発売となり、12月には由紀さおりがロイヤル・アルバート・ホール
に続きピンク・マルティーニの全米公演への参加がスタートする。────────



更に11月15日付けのニュースによれば、このアルバムが
逆輸入の形で 日本でも売れ始めており、急激に売り上げが伸び始めているという。

Pink Martini & Saori Yuki / ブルー・ライト・ヨコハマ

恐らくは坂本九の「スキヤキ」以来の出来事、なのだろう。
古くはピンクレディー、永ちゃん、松田聖子、最近では宇多田ひかる等
数々の歌手が目指しては悉く失敗に終わったアメリカで、このアルバム
がリリースされて多くの人に享受された理由は何故だろうか。また「ピ
ンク・マルティーニ」とは一体どういった音楽集団なのだろうか。そして
この音楽が何故ジャズとしてアメリカで認知されヒットしたのだろう?

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" PINK MARTINI "
ニュースではカナダのジャズオーケストラというふれこみだが、切欠は
ヴォーカルのChina Forbes氏とピアノのThomas M.Lauderdale氏が
オレゴン州のポートランドで結成したグループだ。現在団員は12名。

肝心な音の方向性はと言うと、電気羊がちょっと聞いた印象としては
クラシックとスムース・ジャズと更にはラテン・フレーバーとシャンソン
風味をほんの少しづつ取り込みながら全部ひっくるめ、その上でイージー
リスニングっぽく仕上げた感じ。何と言うか、40年位前にナイトクラブで
流れていた様なイメージ(想像)でもある。

曲はアメリカの曲は勿論、世界各地の歌ものを取り上げつつオリジナルの
曲も発表しているようだ。たぶん対象年齢は50代くらいであろう、早い
テンポや扇情的な歌詞や複雑なリズムが満載された今時の曲をとても聴く
気になれない人達にも聞きやすい様に作られているような気がした。
Pink Martini公式HP

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" 日本の曲を取り上げる "

そして、彼等のディスコグラフィーを調べてみて分かった事がある。「1969」が
リリースされる14年も前から、Pink Martiniは日本の曲を取り上げていた。

1997年にリリースされたファースト・アルバム「SYMPATHIQUE」の
8曲目には"Song of the Black Lizard" 。
(原曲:美輪明宏の「黒蜥蜴」)

[SYMPATHIQUE]
Pink Martini / Song of the Black Lizard
映画「黒蜥蜴」主題歌:美輪明宏

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2004年にリリースされたセカンド・アルバム「HANG ON LITTLETOMATO」の
12曲目には"Kikuchiyo to Mohshimasu"。
(原曲:和田弘とマヒナスターズの「菊千代と申します」)

[HANG ON LITTLETOMATO]
Pink Martini / Kikuchiyo To Mohshimasu(ライブ)

…しかし、聞けば聞く程に摩訶不思議なアレンジだ。一体"何風"と呼べば
良いのか判らないスタイル。カクテルドレスに身を包んだ女性が演奏する
琴やピアニストの謎めいたステージングもさることながら、なんの衒いも
無く日本語で歌うメンバーと素直に受け入れている聴衆…ライブ動画を見
れば見る程、正直狐につままれた様な心持がする。

ただ分かる事は、彼らはこれら日本の曲の他にもアジア各国、ギリシャ、
トルコ、中東、北アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパ各国等の曲を
彼等なりの美意識で取り上げ続け評価されている集団、という事だ。

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そして、2007年にリリースされたサード・アルバム「Hey Eugene!」。
このアルバムの4曲目に今回の話題の人、由紀さおりさんが
"Taya Tan"という曲で参加・初共演している。

[Hey Eugene!]

…やっぱり不思議なアレンジだ…で、気を取り直して更に調べてみると
この曲のちゃんとしたタイトルは「タ・ヤ・タン」で、作詞:山上路夫
作曲:いずみたく氏だという事、それからこの曲は彼女の代名詞とも言
えるデビュー曲「夜明けのスキャット」の次のシングルカット曲「天使
のスキャット」のB面にカップリングされた曲である事が判った。

更にはこのシングルが今回話題をさらった「1969」と同じ年の1969年に
リリースされたものであることが判明した。「ピンク・マルティーニと
コラボするきっかけは、メンバーのひとりが、『ジャケット写真が美しい』
と、たまたま由紀のLPレコードを衝動買いしたことだったそうです(音楽
関係者)」
との事だが、今回のアルバム「1969」が作られた背景にはこの
「タ・ヤ・タン」も一役買っているのかも知れない。

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…残念な事に電気羊の英語力の無さのせいで、今回の大きな謎「このアルバム
がジャズとして認知されヒットした理由」については遂に判らず仕舞いだった。

しかし改めて由紀さおりさんの透明感のある瑞々しい歌声を聴いていると
彼女は聴衆が何処の国の誰であろうと自分のスタイルを曲げずに自信を持
って唄っている事が良く解る。今までアメリカ進出を試みては頓挫してい
った大勢の歌手達が一般大衆に迎合した、とまでは言わないが、彼等と彼
女の一番の相違点は此処にあるような気がしてならない。

「1969」オフィシャルサイト

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由紀さおりさん、と言えば「正統派歌手」の他にも様々な印象が深い。
彼女の魅力の一つである女優やコメディエンヌとしての優れた才能にも
言及しない訳にはいかないであろう。最後に、彼女が今までに見せてく
れた数々の素晴らしい出演作と共に今回のエントリーを締め括ろうと思う。

映画『家族ゲーム』予告編

ティーンエイジャーSAORI

安田祥子・由紀さおり「トルコ行進曲」2001