3/29/2009

土曜日の夜と日曜日の朝



彼・彼女ら:ノーザン・ソウル・オールナイターズのダンスを見た時「驚き」よりも彼らの「言葉」を感じ取った。


そこはイギリス北西部の街:マンチェスター。
繊維・日用品製造の産業がこの街の経済を支え、その工場の労働力となっている彼・彼女ら。
学歴は高くなく、労働者階級の反体制を叫ぶ彼・彼女らの怒りは体制の改革と共に消えてゆく。
社会が不当に築いた彼らの周りの規制への反撥、その規制を守ろうとする権力者の偽善に
対するアナーキックな憤りから不道徳行為という方法で権威へのささやかなプロテスト。


ダンスホール「ウイガンズ・カジノ」の土曜日の夜。
彼らはアメリカ北部の黒人音楽(ノーザン・ソウル)に合わせ一晩中ダンスを踊り明かす。
それはまるでDJブースで廻り続ける7inchのレコードの様に、ただひたすら止まること無く…
ダンスと言っても「ミッド・テンポ」「ストンピング」と言った基本ステップで
誰も直に覚える事が出来る単純なものだ(中にはアクロバテックな激しいダンスも見られるが)。

しかし、それは紛れも無く彼・彼女ら自身の、等身大の言葉だった。

ダンス・ホールの外は日曜日の朝だった。

イギリス特有の曇り空の下、彼らは疲れ切った鉛の様な体を休める為ベットに沈んでゆく。深く、深く、深く…
深い眠りから目が覚める頃にはまた普段の生活が始まり、そんな退屈な日々の始まりの朝だけ太陽が眩しい。


何故彼ら・彼女らは「ダンス」を選択したのか?

街のヨーロッパ屈指のフット・ボールチームの応援(サポーター)ではなく、ダンスなのか?
勿論、「音楽に興味が有った事」上記に記した「権威へのささやかなプロテスト」も
要因の1つではあるが、それ以上な物を感じさせられるのは何なのか?


自分の【肉体】と云う唯一無比の物を使い
『自分の意思で、自分の思いを、今、可能な事、出来る事』
を発信したかったのではと思います。

【Keep Your Face】
彼らの服・バッグに縫いつけてあるワッペンにこの言葉が記されていますが、
正にこの言葉が彼・彼女らを奮い起たせる象徴的な言葉に感じます。