3/22/2009

~InterludeⅠ~『黄昏芸者情話』 ・『Warm Vally』 ・『東京の花売娘』



" 黄昏芸者情話 "

Twilight Geisha

【 幻燈機は蝶の夢をみるか 】
映画『書かれた顔』でのショート・ストーリー。
近未来的舞台に大正・昭和初期の衣装をまとった人物たち、芸者と二人の若者。
Neuromancer/ニューロマンサー的ガジェットで描かれる、
ある意味では典型的な日本の姿かもしれない。

それでも視点を変えてみれば日本人の持つ所作や身のこなしの美しさを
異邦人監督の眼を通して再確認することが出来る。

【 Madama Butterfly 】
プッチーニ「蝶々夫人」をモチーフに
淪落の身となりがらも気高さを持つ女の物語が静かに進んでいく中、
挿入される蓄音機の音色。

SPレコードの擦れる音に交じり合うようにラテンのリズムが聴こえ始め、
ノスタルジックな前奏、それに続き、カンツォーネ風テノールが
ゆったりと情感たっぷりに唄いだされる。

【 つかの間の夢 】
柔らかな歌唱とゆるやかに繰り返される旋律。
それらはまるで穏やかな春の小川に揺蕩う小舟のようでもあり、
一時<いっとき>でもゆらゆらと桜の季節にまどろむかのよう…

【 書かれた顔 / The Written Face 】1995

【 スタッフ・キャスト 】
監督 ダニエル・シュミット Daniel Schmid
主演 坂東玉三郎 Tamasaburo Bando
   大野一雄 Kazuo Ohno
   武原はん Han Takehara
   杉村春子 Haruko Sugimura
 

【 解説 】
スイスを代表する映画監督のダニエル・シュミットが
五代目坂東玉三郎の姿を追いながら日本の伝統文化に迫る
セミ・ドキュメンタリー手法の異色作。

玉三郎の「鷺娘」パフォーマンスは必見。
また舞踏家・大野一雄の雄姿、
巨匠・成瀬巳喜男への傾倒ぶりも興味深い。

text and traced by
【 gkz 】


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" Warm Vally "

DUKE ELLINGTON / MONEY JUNGLE
BLUE NOTE RECORD / BT-85129[Reissue]

厳しい冬が終わり、
春の訪れを感じさせるイントロ。

ゆったりと奏でられるメロディーは春特有の心地好い日溜まりの様で、
山の斜面の木々のは色とりどりの花の蕾が開花を待っているのが感じられます。
里山には春はすぐそこ迄来ているのでしょう。

…故郷?いや、故郷が無い私。
また生まれ育った囲りにはそんな風景など見た覚えはないはず、、、

4月色々な人生のスタートの月。
故郷を離れ新しい生活を始める人、故郷に戻る人…

あなたの故郷は何処ですか?
そこであなたを待っている人は誰なのでしょうか?

巨匠デューク・エリントンのピアノトリオの作品です。
ビッグバンドとは一味違った巨匠のプレイが聴ける一枚です。

text by
【 DJ 】


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" 東京の花売娘 "
歌:岡 晴夫 作詞:佐々詩生 作曲:上原げんと 昭和21年6月発売



当時流行ったブギの体裁をとってはいるが、消して"快活"でも"元気一杯"でもない。"どこか淋しい愁いを含む…"という歌詞の通り、ほのかな哀愁さえ感じさせる曲だ。

この曲のヒットによって当時銀座の辻々には花売りの娘たちが一気に増え、一時は200人を越えていたとも聞く。彼女たちは何処へ行ってしまったのだろう

東京の花賣娘
http://www.youtube.com/user/anayoru



この曲が生まれた昭和21年は昭和天皇による「人間宣言」で幕を開け、
マッカーサー元帥によって極東国際軍事裁判所が設置され、日本国憲法が公布された年である。 それまでの様々な価値観が次々と揺らぎ、ひっくり返され、貧困や混乱を極めたであろう時期にも拘らず「生きる」という大命題に突き動かされ復興の道を歩んだ人々。 彼らの辿った道のりを想う時、彼らの軌跡へと向かう関心のベクトルはいつしか現在へと戻り、今日の我々の有り様や行く道を煌々と照らし続けている事に気付かされる。

『東京の花売娘』は音楽を廃した映画 "麻雀放浪記(原作:阿佐田哲也)" で唯一オープニングに流される曲だ(上記画像は7インチ版ジャケット)。舞台は焦土と化した街並に出現した巨大な闇市とドヤ。登場人物たちは様々な境遇に翻弄されながらも「己の生き方」を自らの手で定め、「己の力」を自らに証明するべく命を燃やし激闘を尽くす。彼、彼女等の図太い生き様・死に様は、どこまでも力強く、尊い。

さて、現代の花売娘は・・・・
実は今でも花椿通りと並木通りが交差する辺りを夜遅くフラつくと、黒服の男たちに紛れて花売娘たちに逢うことが出来る。流石に当時からの花売りは居る筈も無いが、 皆さん人生経験が豊富そうな佇まいだ。いつか彼女たちから花を求め話を聞いてみたい、と思ったりする。

text by【 電気羊 】