4/05/2009

映画「PERMANENT VACATION」 と ドミナント・モーション



1980年アメリカ映画
監督:JIM JARMUSCH


これは僕の物語の一部だ。

物語というもうのは点と点を結んで、最後に何かが現れる絵のようなものだ。
1つの点から別の点へ移る、そこからからここ、いや、ここからここへの話だ。

主人公:アリーは夜眠れないということで夜中じゅう街中を放浪し、歩きながら夢を見る。

主人公の憧れ:チャーリー・パーカー。
彼の演奏の特徴の1つに、ドミナント・7thコードの分散和音を用いて、
7度のインターバルの上降・下降による動きによって広がりのあるサウンドが
得られるのが挙げられる。

主人公が読み飽きた本:マルドロールの歌。
思いつくままに言葉を書き続ける方法を、シュールリアリストたちは自動記述法と称して、
詩でも絵画でも用いた。『マルドロールの歌』も一見シュルレアリストが期待したような
自動筆記のように読まれるがロートレアモンはあたかも物語のように歌を綴り
言葉の連鎖による「言葉の錬磨」を提示したと思える。

ベトナム戦争帰りの男、スラム街で遊ぶ子供達、
スペイン語で歌を歌っている気が触れている女性。
当時アメリカの暗い影の部分がセミ・ドキュメントタッチで描かれている。


1つの点だけでは意味を持たない物が『連続する点』となった時、
1つの答えが浮かび上がる。
点が連続する為に時間軸の役割を放浪する主人公:アリーに持たせ、
先に挙げた「チャーリー・パーカー」「マルロードの歌」等を
ガジェットとして「映像と観客の間」を自由に漂流する。


【ラスト・シーン】

白い波の向こうにマンハッタンが徐々に小さくなっていく中、
ジョン・ルーリーの「OVER THE RAINBOW」のテーマ部分(Aメロ部分)が、
あたかも主人公が放浪するようにゆらゆらと漂う様に繰り返される。


   虹の向こうのどこか空高くに子守歌で聞いた
   虹の向こうの空は青く
   信じた夢はすべて現実のものとなる

   いつか星に願う
   目覚めると僕は雲を見下ろし
   すべての悩みはレモンの雫となって
   屋根の上へ溶け落ちていく
   僕はそこへ行くんだ

   虹の向こうのどこかに青い鳥は飛ぶ
   虹を超える鳥達
 
   僕も飛んで行くよ



「OVER THE RAINBOW」が挿入歌として使われているミュージカル「オズの魔法使い」では、
主人公:ドロシーは魔法の国から無事戻り、ドロシーの安否を気使う人々に囲まれながら
彼女は現実の世界で目を覚ます。

しかし、この映画(Permanent Vacation)の主人公:アリーについては、
青年から大人への移り変わりの「一時保留」と云ったところでしょうか。