3/15/2009

男と女 / Un homme et une femme



【3週間の架空の恋愛物語】 クロード・ルルーシュの世界


【クロード・ルルーシュ】
脚本1ヶ月、準備に1ヶ月。そして映画と同じく3週間での3000カット以上の撮影・・・
カメラの前でのリハーサルは無く、即興あるいは1・2ショット。つまり決められた演技を撮る
のではなくそれはシネマ・ヴェリテのテクニックと呼ばれる現実の報道に近いものであった。
40年以上前フランスでは"スコピトーン" (映像付ジューク・ボックス)が流行。
無名時代のルルーシュはそれを300本以上も撮って稼ぎながら、
音楽に合わせて映像を撮りそれを繋げる技術を習得した。


【カラーとモノクロのリズム】
望遠レンズとハンディカム。屋外をカラーで室内をモノクロで各々統一。
当時のカラー用カメラはあまりに騒音がひどく、解決策として
カメラを毛布で包み俳優達から離して望遠レンズで撮った。


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【映像と音の共鳴】 
どんなにラフで大胆にモンタージュしても、 画面の背後に流れる音楽が一貫していれば
フィルムはひとつの流れとして繋がってしまう聴覚優位の現象。


【フランシス・レイ『男と女』】 
5拍1パターンで繰り返される男女のスキャット。
人をリラックスさせ解放するかのような軽やかで甘いテーマ音楽。
映画より先に完成していたのは曲で、音楽を元に後から撮影が進められた。
ときにシーンの意図の為に俳優に聴かすことも・・・


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【ドービルとパリの間で展開する物語】 
船の汽笛が鳴る遠浅の海岸とパリ・ラマルク通り18区~
モンマルトル1540~寄宿舎、街路、雨の道路を走るムスタング。




【ロマンティシズム】
物語はシンプルだが過去と未来が交錯するように描かれている。
登場人物はそれぞれ子供もいる人生半ばの男女。
人生経験があり喜びも悲しみも知っている。
ひととおりの経験していて、またこれからも経験できる年齢。


ドービルを舞台にしたのは雨や霧や風を求めてだ。
全編を通して寒さが重要なカギになる。
恋愛とは外が寒いほど燃え上がるものなんだ
ルルーシュ



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【芸術と人生~ジャコメッティの逸話】
ドービルの浜辺~映像に合わせて語られるジャコメッティ



男「 ジャコメティの彫刻は知ってるかい?たしか彼はこんなことを言ってる。
 ”もし火事になったら、レンブラントの絵よりも私は猫を救う・・・”とね 」
女「 知ってるわ。”・・・そしてあとで放してやる ”ね 」            .   
男「 そう 芸術より人生を。 そういうことさ 」     
            .
 


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【願望】
現代人のオアシスとしての恋愛願望とインスピレーション


『男と女』は私の実生活とはかけ離れた世界だ。
私の夢の世界、あこがれの人生なんだ。
そして私の映画の根幹はあくまでも人間だ。
俳優にはただの操り人形にはなってほしくない。
人間である俳優が私を引きつけ魅了する
ルルーシュ



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映画 『 男と女 /Un homme et une femme (1966・仏) 』


【スタッフ・キャスト】

監督/製作/脚本/撮影
クロード・ルルーシュ Claude Lelouch

音楽
フランシス・レイ Francis Lai

主演
ジャン=ルイ・トランティニャン Jean-Louis Trintignant
アヌーク・エーメ Anouk Aimée


【あらすじ】
レーシング・ドライバーを職業にしている男と映画製作のスクリプトの仕事をしている女。
二人は子供の寄宿学校を訪ねた折に偶然に知り合う。
お互いに惹かれあい恋から愛へと発展していくなか、
それぞれが過去に置いてきた思い出が重くのしかかり二人を支配し始めるが・・・

【息を呑む美しさ】
アヌーク・エーメ演ずる凛とした女性が貞潔さと愛の享受に葛藤する姿が象徴的な大人のラブストーリー。

【備考】
第39回 1966年度アカデミー賞 外国語映画賞・脚本賞
第19回 1966年度カンヌ映画祭 グランプリ(パルムドール) 時間103分

参考資料
「世界の」映画作家11」キネマ旬報 「男と女」DVD