7/06/2009

戦中・戦後における音楽(前編)



「 JAZZ 」と云ったら皆さんは何処の街を連想するでしょうか?
 ニューヨーク? シカゴ? ニューオリンズ?

今回の話の舞台は【 上海 】


1936年 ─
西洋の国々の殖民地化により色々な人々が集まり、
西洋と東洋の色とりどりの夢で光る街 :上海。
そんな街で日本人 JAZZ MEN 達がジャズに明け暮れる魅力的な日々。

しかし時代は徐々に日中戦争~第二次世界大戦へと進み、
街には日本軍人が溢れ中国人への虐待がまかりとおり、
かつての自由な雰囲気はどこにも無く JAZZ の演奏は禁止されてゆく。

そして長い戦争が終わり
やっと自由にジャズが演奏できる時代が始まろうとしていたが・・・



実話をベースに書かれた戯曲『 上海バンスキング( 斎藤憐:著 ) 』

戦争が進むにつれ、主人公やバンド・メンバーなどの人々の距離感がその人の国籍によってバラバラになっていく様子は非常に辛く、
個人の意思とは逆に国家( 軍隊 )が行う行為、しかしその国家に属す自分。

阿片に手を染め廃人同然の主人公、自分の国を棄て自由に生きることが出来ず軍隊から召集され帰らぬ人となるバンド・メンバー。
日本軍に接収されたクラブで軍人将校の接待の仕事をしながら、彼らを待ち続け生活している歌い手や踊り子の女達。

「 これは全て夢なんだ...きっと 」

「 恵まれている...な 」と、思う。
好きな音楽を聴いたり、演奏したり、考えを文章にしてみたり自由に行えることが。

勿論回りの人々の支援があっての事ではあるが、先人達の犠牲、そして厳しい時代を潜り抜けてきた我が先祖の上に成り立っている事をこの時期だけでも、少しだけ考えて頂ければ。


最後に「 バンスキング 」とは
「 バンス=前借り 」すなわち、JAZZ MEN達の「 ギャラの前借り 」を意味するが、
彼らが本当に前借りしたのは「 夢の前借り 」だったに違いない。



【 text by DJ 】

  参考資料

・ 『 上海バンスキング 』 斎藤憐 著( 而立書房 )

・ 『 上海バンスキング 』 ( DVD ) 1984年
   監督 : 深作欣二
   出演 : 松坂慶子, 風間杜夫, 宇崎竜童, 平田満, ケン・フランケル