7/26/2009

"LAZY RIVER" ~ ひねもす、のたり。~




歌:ミルズ・ブラザーズ(MILLS BROTHERS)
作曲:ホーギー・カーマイケル(Hoagy Carmichael )
作詞:シドニー・アロディン(Sidney Arodin)
(1931年作曲)



《 Barbershop music 》
テレビは勿論、ラジオすら無かった1870年代。
アメリカ南部の黒人達は毎日の過酷な労働の合間に一寸した暇を見つけては
文字通り町々の理髪店に集い、町の噂話や音楽に興じていたそうだ。
当時の理髪店は彼らの息抜きや情報交換の場所としての役割を担いつつ、
独自の音楽スタイルの確立を促す場となった。それが後の1910年頃に
"バーバーショップ・ハーモニー"又は"バーバーショップ・カルテット"
などと呼ばれることになる、アカペラによる男性四部合唱団の誕生である。
その最盛期には各理髪店毎にコーラス隊が居た程の人気ぶりだったらしく、
数々の"バーバーショップ・ソング"なるモノもこの時期に生まれたらしい。


《 Mills Brothers 》

オリジナル・メンバーによるミルズ・ブラザースの結成時期は1920年過ぎ辺りらしい。当時の音源は現存していないが、当時7歳~12歳の兄弟達の歌声は中々のものだったのだろう、その9年後にはN.Y.で始めてのレコーディングを行っている。

彼らはそれまでの伝統的なバーバーショップ・スタイルの流れを汲みつつ、当時流行っていたスイング・ジャズを取り入れ、やがてジャズ・コーラスの草分け的存在となった。






《 Mills Brothersが描く"LAZY RIVER"とは… 》
ホーギー・カーマイケルとシドニー・アロディンによるこの曲は
数々の歌手によって歌い継がれているが、
ミルズ・ブラザーズが唄う"レイジー・リバー"には格別の魅力があると思う。
彼らが思い描いた"川"とはどんなものだったのだろう。

ミルズ・ブラザーズ発祥の地は、オハイオ(OHAIO)州のピクア(Piqua)という町だ。
町の中心地がせいぜい2、3マイル四方程度の小さな片田舎だが、
地図を調べてみると町の北東部に"グレート・マイアミ"と呼ばれる川が
大きく蛇行していることが判る。ミルズ兄弟たちはN.Y.に進出するまで
ずっとこの川の傍で育ち、音楽と親しみながら過ごしていたことは
想像に難くない(下の画像は現在のピクアの地図と1900年頃のピクアの風景)。



『 けだるい夏の日。水辺でまどろみながら、白昼夢に浸ろう… 』という歌詞。
各フレーズ後半部分に決まって半音づつ下がっていくメロディー。
そして 決して急がない、伸びやかなテンポ。

"何もしない幸せ"を囁くように唄う彼等のイメージの原風景。
ぜひ、想像力を膨らませながら聴いてみて欲しい。





Mills Brothers - (up the) Lazy River - YouTube   


「春の海 ひねもすのたり のたりかな」ならぬ、
「夏の Great Miami River ひねもすのたり のたりかな」が味わえるかもしれない。