珠には時事ネタを…ということで、
2日程前に配信されたニュースを取上げて見ようと思う。
【ロンドンのニュース】
一部のロックバンドは以前から、個々の楽曲ではなく、アルバム全体でのみ、自らの芸術性が表現できると主張しているが、
英高等法院は伝説的ロックバンドのピンク・フロイド(Pink Floyd)に対してその理想を実行する権利を与えた。
1曲ずつ売ることは契約違反と英高等法院が判断 |
なるほど。ピンク・フロイドと云えばキング・クリムゾン、イエス、ジェネシス、
エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)と並ぶプログレ5大バンドの雄であるが、
プログレのプログレたる所以の一つである《(トータル)コンセプト・アルバム》の概念である
「アルバム全体で一つの作品だから、トータルで聴いてね」と言うピンク・フロイド側の主張は
確かに頷けるものがある。EMI側の今後の出方に注目したい。
…という括りだけで終わっては些かつまらないので、個人的に思った事を書いてみようと思う。
例えば、彼らのベスト盤である「時空の舞踏("A Collection Of Great Dance Songs"
1981年発売)」や「エコーズ〜啓示("Echoes-The Best of Pink Floyd" 2001年発売)」
に関してはどうなのだろうか?コンセプト・アルバムからの選曲も含まれている。それから
ピンク・フロイドといえばヒプノシス (Hipgnosis)の手によるアルバム・ジャケットを
すぐに連想される方も多いかと思うが、果たして本来はそれらを含めての《コンセプト・
アルバム》なのではないだろうか?
また 自分は音楽配信サービスを利用した事のない古いタイプの人間だが、
1曲毎のダウンロードなぞ当たり前の事なのだろう20代前後のリスナーにとっては
少々戸惑うかも知れないな、などとと老婆心ながら思ったりもする。
クラシック界に目を転じてみるとオペラや交響曲、様々な組曲等をバンバンぶった切って
寄せ集めたコンピレーションアルバムが頻繁に発売されているが、もしも故・ワーグナー氏の
新しい遺言が発見されて「私の全作品はその芸術性を鑑み、全てオリジナルの形態でなければ
ならない」なんて文言が含まれていたとしたら、大変な事になるな…などと、
少々馬鹿げた妄想もふつふつと沸いてきたりもする。
個人的には、故・岡本太郎氏が生前云われていた「自分の作品は手元から離れたら誰に
どう扱われても全く気にしない(大意)」という意見に賛成したいが、どうだろうか。
曲を単体でダウンロードし慣れている前述の若い世代のリスナー達にとって、敷居が高い
のではないか、このタイプの音楽との出会いのチャンスを狭めてしまうんじゃないか…
と大きなお世話だが少々心配にも思う。
その一方で「ピンク・フロイド位の大御所バンドは敷居が高いのが醍醐味だ」とか
「やっぱりPファンクのアルバムはジャケット見ながら一枚を通して聴かなきゃね!」なんて
思ったりもする。何とも結論が出ない話で恐縮だが、このニュースが
昨今の音楽の消費形態を考える切欠になれば良いのかな、と思ったりもする。