5/23/2010

色彩に満ちた美しい調べ


色彩に満ちた美しい調べ

音楽と産業技術の発展は非常に密接な関係がある事は周知ではあるが、
他のリベラル・アートにおいては…例えば【絵画】などはどうであろうか?

絵画とは支持体(キャンバス:紙、布、板、壁等)に描画材料(絵具等)を描画
する事によって成立する。1840年に発明された【チューブ入りの絵の具】の登場。
以前は「顔料や溶剤、助剤」を混ぜ調合して描画材料を画家個人が作っており、
優れた画家の要因の1つに「優れた描画材料を作る事が出来る」と云う事が排除さ
れ、誰でも同じような色を使い絵が描ける点は画期的なものであった。

そしてもう1つ、1820年代に発明された【写真機】の登場により肖像画家達が
次第に職を失うようになった。写真機の登場により被写体を正確に模写する
写実的な技術(写実主義)を持つ画家達の画家としてのステータースが崩壊
したことにより、画家達は「絵画は写実的である」という事から開放され
新しい作風を試みた。そう【印象派】と呼ばれるムーブメントだ。


印象派の特徴として平面構成における自由な空間表現として【主題の強調】。
そして【鮮やかな色彩感】は画材道具の運搬の簡素化(チューブ入りの絵の具)
により画家達がアトリエを出て「野外」にて作品に取り込む結果、「光の変化」
「物質の持つ質感」を色彩表現したものであろう。


BILL EVANS trio「EXPLORATIONS]
(RIVERSIDE RLP-9351)


マイルス・デイヴィス・グループを脱退後、
ビル・エヴァンス立ち上げたトリオの2作目のアルバム。

エヴァンスの演奏についてよくクラシックのドビュッシー、ラベルと云った
フランス近現代の作曲家の影響を受けた話しがよく聞かれますが、機能和音による
手法とは違った「教会旋律や全音音階」などを用いたアプローチに因る点、そして
曲が抽象的になり過ぎず、かつテーマを強調しすぎない点やメロディのアクセントの
変化(タッチの変化)をつけることにより曲に「色彩感」が浮かび揚がる点なども
挙げられるのではないでしょうか。

リズムセクションがエヴァンスのメロディに干渉する様に入り込み、
それをエヴァンスが受け、またリズムセクションが...と
3者3様に曲を進めていく点がこのトリオの魅力ではないでしょうか?


国内でのエヴァンスそして印象派の画家達の人気は、我々日本人が
四季折々の光の変化に因る色彩感、物質の質感を無意識下に肌で知っており、
そして印象派の画家・音楽家が当時の【ジャポニズム】の影響を受けた点や、
エヴァンスが日本の水墨画に通じている点などではないでしょうか?


text by 【 DJ 】