6/22/2010

八十光年の孤独 ~ ” 星に魅せられて ” 『 10ミニッツ・オールダー 』 より


”  万有引力とは  
ひき合う孤独の力である ”


~ 『 二十億光年の孤独 』 より 谷川俊太郎 ~
Two Billion Light-Years of Solitude by Shuntaro Tanikawa


【 Astronauts return to Earth 】

宇宙や銀河の始まりや星の誕生に比べたら、
人類の持つ歴史なんて一瞬の儚い出来事なのだろう。
ましてや一人の人間の人生なんて微々たる塵のようなものかもしれない。

だからなのだろうか?宇宙を題材にしたSF作品では
漆黒の空間から見つめた地球──といった、
人類を俯瞰で捉えた描写が数多く見受けられる気がする。
・・・・・・
それは例えば、、宮沢賢治『 銀河鉄道の夜 』の
南十字座のエピソード(作者自身の宗教観の投影なのだろうか…)
──車窓の外を眺めるジョバンニの姿などに強くそれを感じてしまう。

また、手塚治虫の『 火の鳥 』でのアストロノーツ──
牧村飛行士の存在も忘れ難い。広大な宇宙空間を移動する使命、
それが故の孤独と彼が抱える業《カルマ》の悲劇、・・・あれは怖かった。

或いは『 2001年宇宙の旅 』でスターゲートを通り抜け転送されて
しまったデビッド・ボーマン船長も同じ身の上だし、他にもリック・デッカード、
シロツグ・ラーダット、QUEEN の隠れた名曲『 '39 』 etc... ... と。

【 星に魅せられて / Addicted to the Stars 】

2002年製作『 10ミニッツ・オールダー 』
”イデアの森 / The Cello”に収められた、
マイケル・ラドフォード監督の短編『 星に魅せられて 』。

" Addicted to the Stars " Directed by Michael Radford
a part of “ Ten Minutes Older: The Cello ”2002


この作品では英国人俳優ダニエル・クレイグ演ずる
セシル・トーマス船長が80光年の旅を終えて
地球に帰還するところから物語は始まる。

冒頭、身体検査において医師から明示されたのは
僅か10分間分の肉体老化──、
一光年とは光の速さで一年の距離である筈だから
80光年だと・・・何とも残酷な宣告だ。

そういえば昔々、古代ギリシャでは哲学と科学、
および芸術などが特に分け隔てられる事なく、
同じように論じられていたなど何処かで聞いたことがある。

” 宇宙はひずんでいる  
それ故みんなはもとめ合う ”

~ 『 二十億光年の孤独 』 谷川俊太郎 ~


宇宙から見た地球──経済成長と貧困、絶え間ない紛争、
政治的緊張と摩擦疫病や環境問題、文明は発展して科学技術は
日々進歩する。平和と民主主義を謳歌し正義のスローガンを
声高に叫ぶ人々、誕生し成長してやがて老化し死する──。

破壊と再生を交互に繰り返しながら、
不可逆的に未来に突き進んでいく私たちの時間。

【 The Earth is blue … 】

ふと… 「地球は青かった」と言う、あの、
ユーリイ・ガガーリンの言葉が頭に浮かぶ。
ミステリアスな地球の青い色──カインド・オブ・ブルー、青の時代、
形而上の時間と存在。ああ。考える程に僕はだんだん混乱してくる・・・

つまりはSFというジャンルはある意味では
哲学的領分でもあるということだろうか?

by gkz