7/18/2010

映画 『 太平洋ひとりぼっち / Alone Across the Pacific 』


” ひっそりと        
静まりかえった    
珊瑚礁の向こう   
海の彼方に     
愛と夢は去っていく ”
  

”ビヨンド・ザ・リーフ/ Beyond the reef ”
by Jack Pitman より拙訳


【 Beyond the color of the sea 】

前から不思議に思っていたことがある。海の色はどうして
場所によって青色だったり緑色だったりするのだろうかと。
青・碧・蒼・マリンブルー・アトランティックブルー・・・

例えば、東京湾や横浜港の海の色はグレーがかっている青だ。
気分的なものかも知れないが、江ノ島とワイキキ、あるいは
ゴールドコーストなど各々の海の色は違って見えた。

そういえば昔、兵庫や和歌山の港からちょくちょく
四国へ行きのフェリーに乗船したことがある。
あのときのデッキから眺めた海はどうだっただろうか…

【 Depth of the Pacific Ocean 】

海の色。あの青く見えるのはどうやら光の反射ということらしい。
空の色など天候条件や海中プランクトンにも左右されるらしいが、
大きく言ったら水深が関係しているのだという。

浅い海であれば光が入っても、もう一度跳ね返ってくる。
だから緑色に見える。青いというけれど正確には黄色がかって、
いくらか温かみのある色になるらしい。
・・・・・・
太平洋──日本が面している唯一の外洋であり、
日本列島すらもその周縁部でしかない世界最大の海洋。
その平均深度は約4000メートル──つまり、
光は入ったきり反射せず吸い込まれっぱなしなのだ。

【 Isolated and lonely voyage 】

1962年(昭和37年)8月、
帆を風になびかせて一艇の小型ヨットが
ゴールデンゲートの橋桁をくぐり抜けて
サンフランシスコの湾内に辿り着いた。

船体には”MERMAID”と書かれた文字。
白い帆には人魚のイラストが描かれていた。
波間の上にぽつんと浮かぶ小さなヨット…
デッキの上には一人の青年の姿があった。

”太平洋の水は色が濃い。いくら晴れている日でも、
海面はインクみたいな黒っぽいブルーだ。
どこまでも深い、ほんとうのブルーである。”
堀江謙一著「太平洋ひとりぼっち」より

彼は94日間にもおよぶ日数を掛けて、
広い太平洋をたった一人で旅してきた。
距離はざっと7000マイル(11265km)。
セーリング/帆走による航海──それは
エンジンなどの動力を一切使わずに、
自然の風だけを利用した過酷な航法であった。

映画 『 太平洋ひとりぼっち / Alone on the Pacific 』

監督 市川崑  原作 堀江謙一  音楽 芥川也寸志 武満徹
出演 石原裕次郎 森雅之 田中絹代 浅丘ルリ子
1963年 日活

text and illustration by gkz