7/25/2010

~Interlude~ 迷わず行けよ 行けばわかるさ


   
Sid Viciousが映画『The Great Rock 'n' Roll Swindle(1980公開)』の中で唄った曲。
マルコム・マクラーレンによるエゲツない演出も相当目を惹くが、今回は歌詞に注目して欲しい。

SID VICIOUS - MY WAY - Youtube
(Original and Complete Version)


さぁもうすぐおしまいだ 最後の幕に向かおう
下劣なオマエ、オレはいかがわしくなんかないぜ
もう満足する位生きたし どれもこれもモノにしてきたし
もっと、これよりももっと やりたいようにやってきたのさ
           
まったくくだらねぇけど やらなきゃならないこともあった
全部終わっちまった 恋もしたし、他人も傷付けてきたぜ
生きるための知恵はもう十分身に付けた もう涙も止まったし
みんな楽しいことだったぜ 思ってみりゃ、ネコを殺しちまったんだな
いや、違うんだ、オレじゃねぇよ やりたいようにやっただけさ

本当に感じたままいってみろよ きっとひざまずいた人間の言葉しか出ないぜ
オレが一発かましてやったレコードのショウ
それがやってきたことなのさ
(抽出訳)



兎にも角にも " ウハw やっちまった!" 感が強い出来映えだと思う。動画サイトの
コメント欄に、未だに大絶賛と大ブーイングの嵐が吹き荒れている事からも、このテイクが
今もって様々な人々に影響を与え続けているらしいことが窺える怪作だ。

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さて、お次は馴染みの"The Voice"ことFrank Sinatraのヴァージョンをお楽しみ頂きたい。
彼が歌ったこの曲は米シングルチャートに124週にも渡り載り続け、その結果、彼の代表作
の一つになった。「シナトラ=マイ・ウェイ」と連想する方も多いかも知れない。

FRANK SINATRA - MY WAY - Youtube

今 船出が近づくこの時に ふと佇み 私は振り返る
遠く旅して歩いた若い日を 全て 心の決めたままに

愛と涙と微笑みに溢れ 今思えば 楽しい思い出よ
君に告げよう 迷わずに行く事を 君の 心の決めたままに

私には愛する歌があるから 信じたこの道を私は行くだけ
すべては 心の決めたままに
(抽出訳)



人生の円熟期を迎えた一人の男の生き様が、感慨深げに語られてゆく。
シナトラに次いでプレスリーが歌い、パバロッティもが歌い、ついでにジプシー・キングスも
布施明もがこの曲を熱唱した。在ろう事かフィリピンでは「マイ・ウェイ殺人」が多発しており、
皆この曲を歌う時は命がけだと云う(ソース:インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙)。

人の心を掴んで離さない曲「マイ・ウェイ」。メロディー、歌詞、曲構成のどれをとっても
歌う者にとっては正に"ツボ満載"の楽曲なのだろう。そして、シナトラ版の「マイ・ウェイ」を
愛する者にとっては、恐らくシド・ヴィシャスの歌う「マイ・ウェイ」は許せないのだろうと思う。

しかし。
シナトラヴァージョンのこの曲も、実は " ウハw やっちまった! " なのである。
それも、シド・ヴィシャスヴァージョン以上の。。。

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…それでは最後に、原曲の歌詞を味わって頂きたいと思う。
(少々長いですが、ストーリー仕立てなので全部載せます。ご勘弁の程何卒…;)

CLAUDE FRANCOIS - Comme d'habitude - Youtube
コム・ダビチュード(何時もの様に) 作詞 Gilles Thibaut 

僕は起きて、君を起こそうとする でも君は目覚めない              …何時もの様に。
僕はシーツを君にかけなおす 君が風邪を引きはしないかと心配になる   …何時もの様に。
僕の手が君の髪の毛を愛撫する ほとんど心とは裏腹に            …何時もの様に。
君は寝返りをうって僕に背を向ける                      …そう、何時もの様に。

それから僕は急いで服を着る 僕は寝室を出て行く          …何時もの様に。
たった一人でコーヒーを飲む そして時間より少し遅れてしまう   …何時もの様に。
音も立てずに家を出て行く 外は灰色だ                 …何時もの様に。
寒い、僕は襟を立てる                           …何時もの様に。

いつものように一日中 それらしく振舞うのだ   …何時もの様に。
微笑むつもりだ                 …そう、何時もの様に。
笑いさえ するつもりだ                …何時もの様に。
そうして僕は日々を生きている        …そう、何時もの様に。

それから一日が過ぎてゆく 僕は帰るだろう               …何時もの様に。
君は、君は出かけていていないだろう そしてまだ帰ってこない   …何時もの様に。
そして流す涙を 僕は誰にも見られないようにする           …何時もの様に。

いつものことなんだ、
夜までも僕は、それらしく振舞うのだ     …何時もの様に。
君は帰ってくるだろう、          …そう、何時もの様に。
僕は君を待っているのだ            …何時もの様に。
君は僕に微笑むだろう          …そう、何時もの様に。

ああ、いつものことさ、
君は服を脱ぐ        …そう、何時もの様に。
君はベッドに入ってくる   …そう、何時もの様に。
二人は抱き合う       …ああ、何時もの様に。

ああ、いつものことさ、
それらしく振舞う        …そう、何時もの様に。
肉体の愛さえ交わす     …そう、何時もの様に。
それらしく振舞う        …ああ、何時もの様に。


気だるい日常への倦怠感。 いつしか心が離れてしまった恋人(妻かもしれない)。
その一々に心を苛まれながら、毎日をやり過ごす男の遣り切れなさが伝わってくる歌詞。
原詞とシナトラ版との乖離に比べたら、シド版はシナトラ版から少しはみ出た程度だ…

『「マイ・ウェイ」の原詞…元々ははこんな内容なんだよー 知ってたー?』と、
フランス国籍の知人に教えられた時の驚きはかなりのモノだった。

どうしてこうなった?
まず、ポール・アンカがこの曲を知り、シナトラに捧げたことがきっかけだ。
その際、アンカはこの曲に丸っきり違う意味の、シナトラに合わせた歌詞を載せたのだ。

そして この事自体は特に隠されている訳でも無く、キチンと調べればすぐに判ることだ。
しかし、書籍や楽譜(又はサイト)に依っては「英訳:ポール・アンカ」となっており、
その曖昧な書き方とシナトラ版の絶大なヒットによって原曲が埋もれてしまったのだった。


21年間の人生を全速力で駆け抜けた若者の「オレの生きる道」。
様々な事柄を"オレ流"でやり切った元銀幕スターの「私の生きる道」。
そして、上手く行かない日々と愛の行方を耐え続ける男の「僕の生きる道」。

貴方は誰の生き方に最も共感しただろうか。
そして、「貴方の生きる道」とは・・・