7/11/2010

音楽雑種人間の、どうでもいい愚痴





上の楽譜を音名で唄ってください。と言われたら、貴方はどう読むだろう?
日本では、こんな読み方をする人が大半を占めると思う。

タイプ① 「  ド    レ   ミ   ファ   ソ    ラ    シ   ~♪ 」
タイプ② 「  ハ   二   ホ   ヘ   ト   イ   ロ   ~♪ 」
タイプ③ 「  C    D   E    F   G   A    B   ~♪ 」



一見、何の問題不具合も発生していない様に思えるが、違う。
タイプ①とタイプ②に関しては余り問題がなさそうだが、
タイプ③に関してはその人その人の音楽スタイル(というか素養)
によって、発音が異なるからだ。

ポピュラー音楽やジャズなどを愛好している人は英語読み、
クラシックを愛好する人はドイツ語読みが主流である。

それを踏まえてもう一度書き直してみると、 こんな具合になる。

タイプ① 「 ド     レ   ミ   ファ   ソ   ラ   シ  ~♪ 」
タイプ② 「 ハ   二   ホ   ヘ   ト   イ   ロ  ~♪ 」
タイプ③ 「 シー ディー イー エフ ジー エー ビー ~♪ 」(Pop,Jazz組)
タイプ③ 「 ツェー デー  エー エフ ゲー アー ハー ~♪ 」(Classic組)


自分の場合、幼い頃に教えてもらった読み方はがちがちのタイプ③(Classic組)。
暫くして小学校に上がりタイプ①とタイプ②で音楽の教科書を習はじめた。そして
ほぼ時を同じくしてクラシックの楽式とポピュラー音楽の理論を習い始めたので
タイプ③(Pop,Jazz組)も即座に加わった。

勿論、その時にやろうとしている音楽のスタイルによって音名の言い方を変えれば
済む話だが、幼い時分はその音楽のスタイルは…などと追求する筈もなく、仕方なく
《○○先生の顔を見たら"ド~レ~ミ~"と言い、××先生の顔を見たら"ツェー~デー
エー~"と言っておこう》と決めて、やっとこさっとこ対応していた記憶がある。


さて。
タイプ③の人が同時に音楽の作業をしようとした場合、ここで大問題が起きる。
『ん… そこの部分のエーの音を強く弾いてよ』と誰かが言う。

こう弾いた人はクラシック畑の人だ。



そして、こう弾いた人はポップス&ジャズ畑の人だ。


今仕事で使う音楽はその殆どが"③(Pop,Jazz組)"で事足りるので一安心だが、それまで
自分の中で大大大主流だった"③(Classic組)"の読み方から"③(Pop,Jazz組)"へと
徐々に移行する時期は面倒だった。クラシック音楽畑の人とポピュラー音楽をする時、
ポピュラー音楽畑の人とクラシックをアレンジした曲を演奏する時、いつもいつも
「えーと、それはドイツ語読みのエー?それとも英語のエーの事??」とお互いに
やらないと、互いの演奏がチグハグになることもしばしばだった気がする。

たかだか音名の読み方ひとつで時によって生まれる混乱。
それが楽語や楽式、音楽理論の呼び名にも及ぶとどうなるか。。

かなり極端な話だが、日本でクラシックを習得した知人が旅行先のカナダでJ.S.BACHの
平均率クラヴィーア曲集の話題になった時、カナダ人が「バック、バック」としきりに
言うので最初は自分の背後に誰かいるのかと始終振り返ったそうだ。その知人は話の
途中で、やっと「バック」がカナダ読み(多分英語圏)の「バッハ」の事だ!と判り
居合わせた皆で大笑いした…というのはウソのような本当の話だ。

また、同じ言葉でもその音楽スタイルによって意味が異なる場合も多々ある。
ああ、ややこしい… と思いつつも、今でもたまに
「えーと、それは…?」とやるしかない。音楽雑種人間の愚痴である。