7/04/2010

ピジン英語からリズムを考える






黒人音楽の特徴と言えば、「シンコペーション」や「オフ・ビート」などの特徴的なリズムパターンを思い浮かべるかと思いますが、
では『何故?この様な特徴的な事が発生したか?』(西洋音楽、白人音楽では何故あまりみられないか?)と云うテーマを今回は探っていければと思います。

心臓の鼓動、呼吸、歩行等による人間の生活活動における基本的なリズムが存在しているが、この様な事柄をある特定の生活環境(同じ文化、風土)でも似通った生活リズムが存在すると仮定すると、それを背景とする【言語】や【音楽】等においても似通った音楽形態があるのでは?
ブルースやジャズがアフリカ音楽と西洋音楽の衝突から生まれたものであるが、
【言語】においてはどうであろうか?


周知ではあるがアフリカから奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられた黒人達であるが、ここでコミニケーション(命令)として奴隷貿易をしていた商人と奴隷達の間で共通に使われていた「言語」は現在のような英語ではない事。
そして、奴隷達が団結し暴動・反乱を防ぐ為、「言語が違う異なった部族」を連れてきた点に留意したい。
商人が使っていた英語、異なった言語を使っていた奴隷達のアフリカ地域の言語の衝突により発生した【ピジン英語】を母国語として【プランテーション・クレオール言語】を経て【黒人英語】の誕生が特徴的リズムにどれだけ影響を与えたかを考えてみたい。



ピジン英語とは英語をベースとし経済的時間を簡略した最低限度の英語文法を持った英語である。
英語(白人英語)は「強勢拍言語」と呼ばれ、音韻脚と呼ばれる強勢のある節と弱音節の組み合わせからなる言語に対し、
アフリカ言語(ここでは奴隷貿易が最も盛んであった基地局:マンディンカ、ナイジェ・ゴンゴ族を例として)は「音調言語」と呼ばれるものが殆どで、音節内の母音のピッチの変化により言葉の意味を区別し、音節単位(音節拍)によりリズムが構成されている言語である。(フランス語、中国語なども音節拍リズムによる言語である)


英語では動詞、名詞、形容詞が(文意を明らかにしている部分)強勢音節となり、文法的機能を持つ助動詞、代名詞などは強勢を持たず弱勢音節となる。
更に、文章の意味を決定するのにアクセントの位置によって大きく変化しており、1つの発話単位の中では第1アクセント、第2アクセントに強調表現が置かれている。
しかしこのような概念は持たない「音調言語」は英語と比べるとかなりリズミカルに聞こえ、更にピッチの変化が激しいのでメロディカルにも聞こえる。
音調言語を持つ彼らが強勢拍言語(白人英語)をベースとしたピジン語を使うとどうなるか?は想像に容易く、要するにリズム単位やイントネーションは言語習得時に完成され、それを違う枠に押し込んだものがピジン語であり更にそれが発展し現在の黒人英語と考えて貰えれば。


この様に考えてみると、メロディーは言語リズムに大きく(制約)左右されており、言語リズムは言語(歌詞)の明瞭化に大きく影響を及ぼし、アクセントの移動は言語(歌詞)の不明瞭化を犯しかねない。
しかし、黒人英語は英語とは異なったアクセント構造を持つ為、アクセントの移動による強調表現を取らず、文章の構造そのものを変化させるという手段を選択している。
(この辺りはシンコペーションという概念を発想しやすいと思う)

しかし、アクセントの移動は言語(歌詞)の不明瞭化を犯す点では勿論、不明瞭化を犯しかねないが彼らの言語は音節内の母音のピッチの変化により言葉の意味を区別しており、基本的には発音そのもの自体が不明瞭なので白人英語と比べると自由度が高く感じられ、抑揚の効いた感じに聞き取れる。
黒人音楽におけるよく見られる「シャウト・唸り声」は歌詞の持つメッセージ性より、最早楽器同様に扱う要素が大きくなっている点も頷ける。


細かい文法的な事例を省略してざっとであるが、黒人英語・言語が彼らの音楽的特徴に結びついた点を考えてみましたが…。
恐らく、各個人が持っている「日常生活レベルの言語リズム」がその人個人のリズムなのでは?と思いますがどうでしょうか??