いつのまにか季節はめぐり、気がつけば桜も散った。
今年はいつにもまして呆然の間に見終わった感がある。
太陽の光を浴びて鮮やかな新緑の葉が揺れている。
風が頬を撫でるように通り抜けていく…嘘みたいに爽やかだ。
もはやニュースや報道から発せられる情報──それがもたらす
非情なまでの事実に僕は驚愕し、不安に怯え、それこそ齧りつく
ように注視していた、あの状況からは脱しつつあるだろうか。
今では復興を願う思いが様々なかたちとなって目に見え、耳に
聞こえてくる。また、一方で不満や責任を問う声、課題や懸念
などもはっきりと聞こえてくるようになった。いずれにせよ、
次のステップ・段階へと震災後の世の中は進んで行くのだろう。
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拙ブログの更新が滞りがちだ…。
楽器や楽譜、ときに好みの本や映画を勝手気ままに紹介して、
音楽に纏わるよもやま話をするのが拙ブログのテーマである
から、ざっと言えば趣味の同人誌みたいなものだろう。
個人的には硬派なブログだと思っているが…。
それでも今回の震災という本当にシリアスな出来事に際しては、
自分はあまりにも無力だ。そう実感した。何か書かなくてはと
考えた挙句に、ふと、911の後のニューヨークを舞台にした
一本の映画の事を思い出した──『25時』──。
デイヴィッド・ベニオフ原作、監督はスパイク・リー。
スパイク・リー作品は以前にも拙レビューで取り上げた事がある※
NY市の消防士にはアイルランド系が多かったからだろう、
改めて観るとバグパイプがふんだんに使われていた事に気づく…。
(この映画についてはまた改めて取り上げようと思う)
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YOSHI WADA / Off the WallFree Music Production (SAJ-49) LP 1984 ♪ ♪♪ @ UbuWeb
そういえば…ちょっと前、あのニュースや報道から発せられる情報と
それがもたらす非情なまでの事実に驚愕し、不安に怯え、それこそ
齧りつくように注視してた頃──、僕は偶然にもたまたまネット上で
見つけた現代音楽家の作品をよく聴いていた。それは、ヨシ・ワダ──
日本人の音楽家で、ちょうど彼の作品にもバグパイプが使われていた。
ヨシ・ワダ (Yoshi Wada) 和田義正─1943年京都生まれ。1967年に京都市立芸術 大学彫刻科を卒業後ニューヨークに渡る。ベトナム反戦 運動・ウッドストック・ヒッピー文化・ニューエイジなど、 カウンターカルチャーの影響を受けて、パフォーマンスや コンサートといったフルクサス*1とその活動に没頭していく。 :: ラモンテ・ヤングやパンディット・プランナート、ジェームス・ マッキントッシュ(スコットランドのバグパイプ奏者)等と一緒に 音楽を学び、作曲やパフォーマンス、双方向性のサウンド・ インスタレーション*2や音響彫刻を制作した。作品はニューヨーク、 ベルリン、シドニー、ヴェニス、パリなど各地で展覧された。 |
不明者の数、半径20~30キロ、屋内退避、燃料棒、シーベルト、
ベクレル、終日運休、計画停電、、、聞き慣れない単語や言葉に戸惑い
混乱する中…今思えば、ヨシ・ワダのバグパイプのどこまでも
絶え間なく持続する音色──既成のフォームから逸脱した音楽を
聴くことで、とりあえず僕は何も考えないようにしてたんだと思う・・・
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by gkz
フルクサス (Fluxus) *1補足 ジョージ・マチューナス(George Maciunas)が主唱した前衛芸術運動。 1960年代にジョン・ケージの影響を受けた若手作曲家・若手美術家 たちが日常と芸術の垣根を壊し新しい表現ジャンルとして切り開いた。 |
インスタレーション (Installation art) *2補足 現代美術における表現手法・ジャンルの一つ。室内や屋外などにオブジェや 装置を置いて空間全体を作品として体験させる芸術。音響などを用いて 空間を構成する場合はサウンド・インスタレーションとも呼ばれる。 |
参照サイト
UbuWeb