5/08/2011

映画 25時 / 25th Hour

【 Obama visits Ground Zero 】

現地時間5月5日──ニューヨークを訪れた第44代
アメリカ合衆国大統領バラク・オバマは市内の消防署を
訪問した後、グラウンド・ゼロにて献花を行ったという。

あの同時多発テロから約10年の歳月が過ぎた───

報道写真に目を向けると元市長のジュリアーニの姿がある。
…少しばかり老けたか?彼の目尻の辺りに刻まれた皺の数
と広くなった頭頂部からも経過した時間が分かる気がした。

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断片的な情報しか知らないが…この何日かのアメリカ
政府筋からの発表を聞く限りでは、今回の首謀者殺害
についての基盤となるエビデンス・法的根拠の曖昧さと
疑問、不可解な点などはつまるところ、国際的な司法
制度の欠如といった危うい面を露呈していると思う。

今後の報復行動の懸念とアフガニスタン撤退への影響が
心配だ。日程上もロイヤル・ウェディングへの配慮と
サミットでの政治的な意図など他にも色々とあったのだろう…
ともかくこれはこれでひとつの区切りとなれば良いのだが。


【 25th Hour 】

タイミング的に微妙だが…スパイク・リー監督による映画
『25時』について少し書いてみたいと思う。911の後
間もないニューヨークを舞台にしたスパイク・リー監督による
2002年製作の作品だ。原作はデイヴィッド・ベニオフ。
僕は東日本大震災の後しばらくヨシ・ワダさんの音楽を聴きながら
…その混濁しつつも瞑想の世界にいざなうバグパイプの
通奏音にこの映画の事を重ねてはあれこれ思ったものだ。

~"25th Hour" a film directed by Spike Lee (2002)~” 決して振り返るな 昔の人生は忘れろ
電話も手紙もダメだ 二度と戻るな
新たな人生を築き 存分に生きろ
約束されていたはずの人生を

そしていつか 真実を話してやれ。
お前が一体何者で 何処から来たのかを
すべて話してやれ そしてこう言うのだ、
皆でこうしている事が 如何に幸せか

お前たちは存在しなかったかもしれない
この人生は幻かもしれなかったのだ ”


~『25時』台詞より抜粋~


【 Music by Terence Blanchard *

冒頭、ニューヨークの夜景に二本の光が浮かび上がる。
空にまで届く大きく眩い光。始めは何のことだか分から
ないが……やがてモニュメントの意味だと理解する。
これはCGではなくて実際の映像だという。こうして
マンハッタン島に”幻”の世界貿易センタービルが
聳え立つところから、この物語は始まっている。

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バグパイプの通奏音がゆっくりと鳴り響く、そこに
アラビア風の歌唱が旋回するようにして重なる──不協和音、
そして軍楽隊の太鼓の重低音がすべてを切り裂くように轟く…
音楽担当はテレンス・ブランチャード。本来トランペッターである
彼だが、全編に渡りスコアは重々しい仕上がりとなっている。

登場人物の背後に写り込むグラウンド・ゼロの瓦礫の山、
作業員たちとショベルカーのショット、或いは犠牲となった
消防士たちのプレート類、街中に掲げられた星条旗など、
先に述べた冒頭部を含めてこの映画では実際の映像が多く
使われているのが特長だろうか…。今現在とは違った撮影
当時のニューヨークのシリアスな様子や雰囲気が分かる。

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~"The 25th Hour" is a novel by David Benioff (2001)~【 Written by David Benioff 】

主人公は収監されるのが決まっていた。
その刑期は7年。自由でいられるのはあと24時間。
刑務所でハンサムな若い白人男性を待ち受ける運命は
恥辱に満ちているという・・・彼に残された選択肢は
1 服役、 2 逃亡、 3 自殺、、、

絶望を抑えながらも主人公は愛する者たちと
淡々とした一日を過ごす。やがてパーティーの
夜が明け、彼が親友に懇願したこととは?
そして最後に父親が彼に申し出たこととは?

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最後に…一日は24時間である。過ぎれば必ずゼロ
に戻る。音楽の話をすれば、いわゆる西欧音楽の
世界は構造上、長・短調すべて合わせて24調である。

この作品タイトルの”25時”とは時間表記で
よく便宜的に使われる午前一時の事ではない。
さて、では25番目の時間の意味とは?



by gkz